アメリカは夏最後の大型連休。これが終わると、日本での春みたいに、学校も会社でも始業式(会社はあるのかわかりませんが)新しい1年のサイクルが始まり、世間や市場にも活気が戻ってきます。
お子さんをお持ちの親御さま、大変お疲れ様でした。
さて、今日は「正しい不動産市場の例」として、週末出させていただいた新しい”ワケあり”物件を例にお話させていただきます。これは任意売買物件で、買付オファー受諾後、銀行と交渉しなくてはいけない物件です。物件の状態は・・実は随分前にこちらのブログでもご案内していました。そうです、あのジャンクハウスが、何とか見せられる状態に・・。
この大型連休で出足が懸念されていましたが、心配後無用。予想以上の反響を得ており、3日間とも来場が途絶えません。シアトルエリアに比べたら天と地の差ですが、イーストサイドではまずまずの反応です。
その理由はなぜか。
1.空き家なので、魔法のリモートキーボックスで無人キオスク状態にて見放題。
2.エリア内にしては破格であり、売り文句にも「投資家を主に」とターゲットを予め絞り込んだ。
3.投資家=Cash Buyerの率が高いので、実はCash Buyerを狙う、すなわち、ローン査定が面倒な物件になりますよ~という雰囲気を醸し出す、一見やる気のなさそうなマーケティング。でも専門的な必要情報は満載に。
(ローンの場合はバックアッププランあり。)
4.中の写真を載せていないので、物件への興味が沸く。(毎回、同じ手法を使っているわけではありません。)
と色々とあるのですが、まず、毎回気になるのは反響。エージェントからはもちろんですが、中にはエージェントのいないお客様から直接連絡があることも。
日本でしたら「反響」の一人として「喜んで!」と出向かうところですが、私はそうしないことが多いです。
まず、エージェント普及率90%を誇るアメリカ、雇っていないBuyerは1/10以下のポテンシャルゾーンであること、そこで既に真剣度がソートされてしまいます。
家を買いたいという願望=エージェントを雇う、ということが必ずしもイコールと言っているのではありません。あくまで売り側の立場にたった見解です。
売主から見れば、「少しでも多いポテンシャルを失くすのではないか。」と思う方もいるかもしれませんが、私たちの仕事はポテンシャルの幅だけではなく、見極める力も重要です。たった一組しか売れないという事実。すなわち、この一組に全てを掛け、契約を成功しなければ、私たちを雇う意味がありません。
残念ながらそういったお客様から連絡があると、まずは簡単にインタビューをし(すぐに買える状態なのか、購入希望価格のローン仮申請は終わっているかなど)実はオフィス内の新人エージェントさんへご紹介します。
「両手(売り買い両方の手数料)を取れるかもしれないのに!」と思うかもしれませんが、上記で述べたように、買い手を見極める際、非常に難しい立場になり、両手は特別な理由がない限り、私の場合はほとんどないです。
ただ、私から見えているのは、この時点でこういった、エージェントを使わない買い手さんは実はレースから外れてしまっている事実。スタートポイントにも立てない方から連絡があると、思わず「(他の)エージェントを今からお探しになったらいかがですか?」と勧めてしまうほど、見ていて歯がゆい思いがします。
他のBuyerは既に的を絞った計画をしており、2歩も3歩も先を行っているのです。売主側としては当然、そういう準備周到なBuyerへ心が動きます。
残念ですが、普及率が9割のアメリカでも未だ、このようなチャンスを見逃しているBuyerさんもたくさん見受けられます。
次にエージェント。
投資専門は私が普段接している居住専門の人たちより、違うタイプの人がたくさんいておもしろい。専門的な質問を矢継きにしてきて相手の能力を計ったり、物件を見ないで、ほぼ数字、立地だけの判断でオファーを送ってくるエージェントもいます。
それでも私はコミュニケーションを大切にします。
これから半年かの永い間、ショートセールというプロセスでコミュニケーションが一番大事だからです。
ということで、1つ、オファーを頂いていますが実はこのオファーが成約に導くことは限りなくゼロとたった今、暫定しました。
まず、物件を見ていない、これはいいとしても内容がチグハグ。それに対し何度も問い合わせをしていますが、そもそもメール以外、連絡先もなし(探せばありますがそんな時間も無駄です。)、Eメールのみ、3人にCCがしてあって誰からもなし。
単なるオファー荒らしになる可能性(他のオファーの金額が釣り上がったり、ポテンシャルを取り違えたり等)があったので、丁重に最低必要条件をお願いしてみました。投資物件ってこんなこともあるのかなぁと。
火曜日の締め切りまでどのくらいの反響が続くかが勝負です。どのような動きになるかわかりませんが、厳しく見守っていきたいです。
ずばり、オファーの決め手は以下の通り。
1.エージェントが任意売買のプロセスを知っていること。(案外、知らない人が多いです。)
2.Cash であること。(強く願望。)
3.インスペクションは事前に済ませて欲しい。
この3つがこちらの条件なので、エージェントを雇っていないBuyerは上記のうち、2つはまず叶わず、他で補うプレゼンが必要で、自然と相手にされなくなってしまうのです。
オファーが入ると、実は中の写真を追加します。銀行からの価格査定が入るまで、いかに中のコンディションが悪いかをアピール(笑。銀行の投資家は州外が多いので、実際に物件を見ることはできません。
実際に物件を見るのは、買い手のローン査定会社。この方たちには、よく見せなくてはいけないので、ローンBuyerになった場合は多少、修繕を加えるというプランがあります。
市場に載せる際は、なるべくポテンシャルの底辺を広げるため、妄想していただきたく、中の写真は一切なし。でもそこそこは見られる状態にしておき「思っていたほど悪くなかった。」というのがゴール。
他の任意売買エキスパートの動きを見ていると、この辺の「仕掛け」が面白いです。なるほど!と勉強になりますね。
ということで、任意売買は一見「安い!お買い得!」と思う方も多いですが、やっぱりプロに見てもらったほうがいいです。
日本のみなさま、あなたの不動産屋さんは大丈夫ですか?
1.囲い込み物件は売主のポテンシャルを半減させています。(アメリカでは違法。-Poket Listing)
大手だから安心、小さいから親身に、ではなく、ご自分の物件が正当に市場で評価されているか、疑ってみてください。
2.買い手エージェントは買い手の目線で交渉、リスクを分析して判断、時には購入のみ合わせを促してくれます。
広告を見て売主へ問い合わせ、ご自分で大きな買い物を交渉をしていませんか。
3.情報共有・開示は1つの物件に対し、こんなにもポテンシャルを「自動的に」広げてくれます。
これは行政の仕事。。
日本にも早く、こんな時代が来るといいなぁと切に祈りながら。